かってな語学日記

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スラヴ語動詞の構造 進捗メモ

スラヴ語動詞の構造

 先週の記事で、原求作さんの『ロシア語動詞の構造』を参考にしてスラヴ語の動詞の構造を調べたい、ということを書いた。対象言語はロシア語のほかに、ウクライナ語、ベラルーシ語、ポーランド語、チェコ語、スロヴァキア語、スロヴェニア語、セルビア語、クロアチア語ブルガリア語、マケドニア語、古代教会スラヴ語。スラヴ語はまだいくつかあるけれど、資料が足りないのでこれが自分の限界である。これで12言語、単純に考えてロシア語だけ調べるのに比べて12倍の労力がかかる…。

 今までに調べて途中で放置していたのがあるので、その続きから調べ始めた。具体的に言うと、『ロシア語動詞の構造』の第1課、第2課、第3課までは終わっていたので、第4課「動詞不定形と動詞現在形の関係」を今調べているところ。第4章と聞くと「なんや結構進んでるやん」と思うかもしれないけども、これでもまだ不定形と現在形を調べただけで全然まだまだ…! これから過去形、能動形動詞、被動形動詞、副動詞、命令形と様々な形態が続いていく。それが第5課と第6課で、第7課は不規則動詞、そのあとに補説がある。まだまだ先は長い。

 ということで、今回は軽く進捗状況と、ぶつかった問題をメモしておく。

問題1 ブルガリア語とマケドニア

 『ロシア語動詞の構造』の第1課から第4課までは、基本的に不定形と現在形のことが書かれている。ここで問題なのが、ブルガリア語とマケドニア語には不定形が存在しないということ。うーんどうしたものか…! しかもよくよく考えると、第5課以降もだいたい不定形の分類に従って話が進んでいくので、不定形をもたないブルガリア語とマケドニア語を対象に入れるのはきついかもしれない。

 そもそもスラヴ語の中で、ブルガリア語とマケドニア語は少し特殊な言語である。不定形が存在しないだけでなく、動詞の時制もロシア語より複雑なので、『ロシア語動詞の構造』を参考にしてアレコレ調べるには……やっぱりちょっときついかも。

 しかしそれでもスラヴ語の一員であることには変わりない。こうなったらブルガリア語とマケドニア語だけ別に調べることにするとか。ちょっと、このあとの第5課、第6課辺りもどう調べるか、一度考える必要がありそう。

第1課~第4課 進捗メモ

 第1課ではロシア語動詞の基本的な構造、第2課では不定形の分類、第3課では現在形の分類、第4課ではこれらを受けて不定形と現在形の関係について書かれている。スラヴのどの言語でも動詞の基本構造は大して変わらなくて、『ロシア語動詞の構造』における分類がほぼそのまま通用するのが有難い。とはいえ『ロシア語動詞の構造』はロシア語について書かれた本なので、ほかのスラヴ語についても調べようとすると、多少分類をいじる必要もある。

 例えば、不定形の分類で「語根末にbがある」グループ。ロシア語ではб(b)を語根にもつгрести(現在形гребу)や、скрести(現在形скребу)がこのグループに属す。このグループの動詞は、現在形で語根にбが現れ、不定形にも実はбが隠れている(元はгребтиという構造だった)。『ロシア語動詞の構造』では「語根末にpがある」動詞については書かれていなかったけど、セルビア語、クロアチア語、古代教会スラヴ語などの本を見ると語根末にpをもつ動詞があって、語根末にbをもつ動詞と同じグループに属していることが分かる。なので、改めてロシア語でも「語根末にpをもつ動詞」はないのか?と探したけど辞書には載ってないみたいだった。しかしセルビア語などに存在することを考慮すると「語根末にpまたはbがある」グループとしてまとめ直すのが妥当かな、と思う。

 現在形の分類は、ロシア語だとе型とи型の二つに大別され、あとは少数の不規則動詞があるだけ……なのだけど、ロシア語、ウクライナ語、ベラルーシ語、古代教会スラヴ語以外の8言語には、これに加えてもう一つ動詞の型がある。これに関しても、ロシア語の分類はいったん忘れて、再分類する必要がある…。例えばスロヴェニア語では現在形1人称単数の語尾が-am, -em, -imの3パターンある。a型、e型、i型という風に分かれているようにも見えるけれど、そもそもロシア語には現在形1人称単数の語尾がм(m)で終わるような型が(一部の不規則動詞を除いて)存在せず、1人称単数にmが現れるのは西と南の現代スラヴ語における特徴となっているので、1人称単数に-mをもつタイプをまとめて仮に「混合型」と呼んで分類することにした。スロヴェニア語のa型、e型、i型が全部ここに入ってしまうので、まだ再検討の余地があるかもしれない。

問題2 動詞の分類について

 上に書いたように、ロシア語の分類だけでは通用しない部分も多少ある。例えば「語根末にs, zがある」グループは、ロシア語だと不定形語尾を付けても語根が変化しないタイプだけど、ポーランド語やスロヴェニア語などでは変化する。そうなると、『ロシア語動詞の構造』でされていたような、深層構造に基づく分類、「語根末に○○をもつ」とか「語根と語尾の間に○○をはさむ」のような分類だけだと不十分な気もしてきた。

 しかしこれこそが最大の面白みというか。不定形と現在形の関係を調べると、不定形が「語根末にs, zがある」グループは動詞の活用が見事にすべてe型(混合型の場合はeが現れる型)になる。不定形語尾を付けたときに起こる変化は様々だけど、根っこに共通したものをもっているのがすごく面白い。

問題3 古代教会スラヴ語

 これは些細な事だけど、一応。最初は古代教会スラヴ語についてまで調べるつもりはなくて、第4課の範囲から一緒に調べ始めたので、後で第3課までの範囲についてやり直さないといけない。古代教会スラヴ語はもう死語だから、対象に含めるかどうかちょっと考えたけど、データは揃ってるしどうせだからやってしまおうということで。

次回予告(?)

 興が乗ってきたので、しばらくスラヴ語動詞の構造について調べるつもり。ある程度まとまったらブログに書きたい。しかしまとまるのはだいぶ先になる、というか、最悪まとまらずに途中で飽きる可能性もある。なんというか、やってる間は楽しいけど、第3課までやって一度放置したように、別に面白いことを見つけたらそっちに興味が移ってしまう。なるべくそうならずに最後までやりとおしたいところ。