かってな語学日記

日本語、外国語、言語学、文字、その他いろいろな語学のこと

スラヴ語動詞の構造 進捗メモ2

「スラヴ語動詞の構造」について

 スラヴ語の動詞の構造について、原求作さんの『ロシア語動詞の構造』を参考にしつつ調べるという試み。スラヴ語とは、ロシア語を含むスラヴ系諸言語のこと。対象言語はロシア語、ウクライナ語、ベラルーシ語、ポーランド語、チェコ語、スロヴァキア語、スロヴェニア語、セルビア語、クロアチア語、古代教会スラヴ語、ブルガリア語、マケドニア語の12言語。『ロシア語動詞の構造』が、動詞不定形の分類を基本としているのに対して、ブルガリア語とマケドニア語には不定形がないので、この2言語に関しては扱いを保留中。でも不定形以外の動詞の構造は調べたい。

 具体的にどんなことをやっているかというと、『ロシア語動詞の構造』で動詞の構造はかなり細かく説明されているので、それをほかの言語にも当てはめていく。ロシア語のплести{plesti}がплет-ти{plet-ti}という構造になっているのなら、ポーランド語のpleśćも、スロヴェニア語のplestiも、同じplet-tiという構造をしていると考える。そして、そこに表れる細かい変化を観察する。plesti「編む」の場合、ロシア語とスロヴェニア語はよく似ているけれど、ポーランド語ではt→s→śという変化が起きたんだな、というように。

 こんなことができるのも、語源を共有している語がスラヴ語によく残っていて、お互いに本当によく似ているからこそ。とはいえ、ポーランド語のpleśćのように、ほかと少し違う形に変わっているものもある。そういう点を比較していくのがこの「スラヴ語動詞の構造」でやりたいこと。まとめるのはまだ先になるので、この記事では今現在の進捗状況とぶつかった問題を、前回に続きメモしておく。

第4課 進捗メモ2

 第4課は不定形と現在形の関係。ロシア語以外の不定形と現在形を、別紙にまとめた不定形の分類ごとに書いていく。問題は次から次へと出てくるけれど、作業は割と順調。

 スラヴ語の動詞現在形は人称(1人称・2人称・3人称)と数(単数・複数)によって活用するので、現在形だけで6つの変化形があるのがふつう。スロヴェニア語では双数もあるので、現在形が9つある(怖)。今回は動詞の構造を比較するだけだから、変化のタイプが分かればそれで十分なので、1人称単数・2人称単数だけメモする。

 この現在形1人称単数・2人称単数を見て紙に書いていく作業が実に楽しい。意味わからん現在形にぶつかることもあるけどそれはそれ。不定形の分類は同じでも、現在形の分類は別だったり、現在形で同じ語尾が付くとしても、違う音変化を起こしていたりするので、とにかくたくさん例を集める必要がある。そのために、辞書をぱらぱらめくって語を探す時間は何ものにも代えがたい。ただずっと同じ作業を繰り返すことになるので割と疲れる。

問題5 分類が分からない語

 ぶつかる問題のほとんどがコレ。不定形の分類に従って作業を進めているのに、そもそもどのグループに分類されるのか分からないものがある。『ロシア語動詞の構造』における不定形の分類は表層構造ではなくて、深層構造に基づいて分類されているので、zobaczyćとukryćのように見た目は同じyćで終わっていても違うグループだとか、そういうことがあり得る。スラヴ語間で語源も構造も同じ語があれば分かりやすいのだけど、実際は語源は同じでも動詞を作る構造は別ということもある。この辺り素人にはちょっと厳しいかも。

 たとえばセルビア語のпросути{prosuti}「こぼす」は現在形がпроспем{prospem}となり、不定形にはないп(p)が現在形に現れる。しかしこういうタイプの動詞がほかスラヴ語にはあまりない。ロシア語のпросыпать{prosypat'}「こぼす」が似ているけれど動詞の構造が違うので、ロシア語のほうがどういう構造かは分かっても、セルビア語のほうは分からない。現在形を見る限りでは、просути{prosuti}はもともと語根にп(p)をもっているんだろうけど、そうだとしたらгребсти{grebsti}と同じグループに分類されることになり、しかも違う音変化を起こしていることになる…。うーんわからん。

 スロヴェニア語はverjeti「信じる」が現在形(1単)でverjamemとなる(mが現れる)理由と、močiの現在形(1単)がmoremとなる理由がよく分からない。verjetiの活用はvzeti → vzamemのようなタイプと似ている。しかし意味からするとverが語根だと思うし、ver-jetiだとしたら接頭辞も接尾辞も使わず語根+語根+語尾という構造をしていることになる。そんなことがあり得るのか…。močiは不定形の分類は分かる。ロシア語のмочь{moč'}やポーランド語のmócと同じで深層構造はmog-tiのはず(gtiという子音連続が音変化を起こす)。過去形はmogelだし間違いないと思うのだけど、なんと現在形はmorem, moreš...とgではなくrが現れる。過去形がmorelになっていたらまだ良かったものの、これも一体どういうことなのやらサッパリ。

次回予告的なもの

 今回もこういう記事になったので、来週も同じような記事を書くことになるかなと思う。まだまだ終わる気配がない。どこかでバーッと時間を取って作業時間を増やしたい。このブログを書いている時間がもったいないもうちょっとで第4課の範囲が終わるはずなので、そしたら一旦第1課~第4課辺りまでまとめる、というのもありかもしれない。第2課と第4課が一番面白いところだと思うから、ここまでまとめたらあとは飽きてやらなくなる可能性もないとは言い切れないけども。